El fandango en la frontera

辺境のファンダンゴ。メキシコ在住ライターのラテンアメリカ情報ブログ。

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Las muertes chiquitas おんなたちの肖像 

今回の記事は、ブログで書こうと思っていたんだけど、タイミングを逃していたもの。
ちょっと話題が古いのですが、どうしても書いておきたいので、掲載します。
ーーーー


メキシコシティのテピート地区は、海賊盤や密輸商品、そして麻薬のマーケットとして知られています。
しかし、犯罪の温床とされながらも、古くから、文化人、スポーツ選手、音楽家たちが多く生まれ、文化が息づいている場所なのです。
そんなテピートを舞台にした、コンセプチュアル・アート作品として、スペインのアーティスト、ミレイア・サジャレス監修による『Las 7 cabronas e invisibles de Tepito(7人のけったいな女たちとテピートの透明人間たち)』の発表が2009年7月14日~28日まで行われました。

この作品のテーマはメキシコのマチズモ(男性至上主義)社会に生き、しかも悪名高きバリオ、テピートに根を張り、強く、したたかに生きる女性たちの歴史を探るもの。
テピート地区の中心にある団地=ラ・フォルタレサの中庭にスピーカーを設置し、テピートに住む20代から80代までの、さまざまな経歴を持つ7人の匿名女性の語りを録音したものを大音量で流したのです。
その場所には、コンクリートで出来た、『7人のけったいな女たち』を記念するモニュメントまで建立されました。
「ここの男たちのほとんどが刑務所に入れられていて、残された女たちが働き、家を守っていた。テピートで生き抜くためには、けったいな女にならなければやっていけない。私はこのバリオに暮らすことで、どんどん強くなっていった」と語る32歳のダンサーや、ざっくばらんにセックス考を説く50代の主婦、幼少の頃、85年の大地震で家が崩壊した後に、靴みがきをして家計を支える母親を見て育ってきた20代独身女性など、苦労話をユーモアにくるんで語り、生き生きと暮らす彼女たちの話を聞いていると、こちらまで元気になります。
 この作品の興味深い点は、今まで男たちの影に隠されていた女性たちの声が、スピーカーを通して、現実のバリオに響き渡ったことでしょう。それを地元のタトゥーだらけのやんちゃそうな男性たちも静かに聴いていました....。


そして、この「けったいな女たち」を発展させたのが、
『Las muertes chiquitas』(petite morte)というプロジェクト。
メキシコの女性たち(なかには外国人も)50人以上へのインタビューで構成された書籍と、映像、写真によるもので、テーマは、暴力、死、性への快楽、または痛みについて女性の視点で探って行くもの。
それを、あえてマチズモ(男性優位主義)や、女性に対する暴力が横行するメキシコで行うというハードコアな企画。
cineopera1.jpg
その映画部門の上映が、2010年始めに行われたのですが、会場がスゴい場所だった。
なんと今は使われていない映画館で、ほとんど廃墟。
cineopera2.jpg
cineopera3.jpg
かつては素敵な場所だったんでしょうね。
ロビーでは、『Las muertes chiquitas』の写真が展示されていました。
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cineopera5.jpg
インタビューで答えている女性が、Las muertes chiquitasというピンクの
ネオンサインと一緒に写真を撮るというコンセプト。なかなかおもしろい。
cineopera6.jpg
cineopera7.jpg
しかし、こんな崩壊寸前な場所で上映とかやっちゃうの、日本じゃ考えられないね。
cineopera8.jpg
さて、映画のほうですが、編集にキレがないので、せっかくいい瞬間を
捉えているのに、だらだら感があり、非常にもったいない!
でも、インタビューを受ける女性たちが、男性たちとの苦い経験や困難な境遇を持ちながらも、たくましく「今」を生きているのは十分に伝わりました。
しかも彼女たちの肝の据わり方がハンパない。
取材されるのも露天商、教師、活動家、芸術家、学生など世代も職業も住む地域も異なるさまざまなタイプの女性たち。
売春婦の女性は「客とセックスするときは、“あたしは今勤務中、勤務中”って自分にいい聞かせてヤるのよ」とあっけらかんと語り、ある主婦はオーガズムを得ることの難しさを告白する。
登場人物が、性について語っていくのですが、背後には常に死と暴力の影があるのです。

そのうちのひとりには、北部チワワ州シウダー・フアレス在住、女性連続殺害事件の遺族たちにより結成された行方不明者の捜索や抗議行動を行う団体“Nuestras Hijas de Regreso a Casa” のメンバー、マリルー・アンドラーデもいます。 1995年から2009年までシウダー・フアレスで失踪、殺害された女性の数は800人におよびますが、事件は未だに解決されていません。マリルーの妹も殺害され、その事件をきっかけに、ひとりの女性として、人生をかけて闘うことを誓ったのです。

メキシコでは、女性の5人に1人が、夫、恋人などのパートナーから暴力を受けているといわれます。
それほど、この国では女性は耐え忍ぶ存在という、理不尽な風潮が成り立っているのです。
そんななか、『Las muertes chiquitas』に登場した、女たちの発言は痛快。
彼女らは、すごく頭がキレて、どんなことにも動じない強靭な精神力を持つ。
彼女らの存在を世に伝えることが、どれだけ他の女性たちに勇気を与えるか知れない....。

私自身もメキシコの生活で、女性たちには本当に助けられてきました。
そんな女性たちに、この土地で会えたことは、ほんとラッキーだったんだろうな。
出会ってきた痛快な女性たちのように、ひとにパワーを与えるような存在に
なりたいもんです。
(この文章は過去に雑誌ラティーナのメキシコニュース欄に書いた文章をブログ向けに加筆、要約しました)
 
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[ 2010/04/25 17:18 ] メキシコ裏観光 | トラックバック(-) | CM(0)
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