El fandango en la frontera

辺境のファンダンゴ。メキシコ在住ライターのラテンアメリカ情報ブログ。

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43の真実を叫んだペドロ・アスナールのメキシコシティ公演 


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先週土曜日(2014年11月29日)に15年くらい前からすごく好きなアーティストなのに一度もコンサートを観る機会がなかったペドロ・アスナール(Pedro Aznar)のコンサートへ初めて行ってきた。

たしか昨年だったと思うが、メキシコ公演があったのに気づいたときにはすでに終わっていて、悔しくて仕方なかったのだ。今回はFacebookの知人の書き込みによってメキシコシティ公演があると知った。しかも公演のわずか10日前だったので、まだチケットがあるかわからない。慌てて会場であるメキシコシティ市立劇場(Teatro de la ciudad)へチケットを買いに走ったのだった。格式高い劇場なのだが、天井桟敷席は150ペソ(1200円)と安い。それを狙ったのだが、みんな考えることは一緒のようで売り切れていた。一階席はまだ余裕があるようだったが、メキシコにしては高額の500ペソ(4000円)だ。財布の中身もキツいが、これを逃したら今度コンサートが観られるのがいつになるかわからないのでチケットを買ってしまった。

どうやら今回の公演は最新アルバムCD『A la carta』のお披露目のようだ。ちなみにうちの夫はヒップホップとバンダ、ノルテーニョしか興味がないため、音楽が気に入らないとむっつり顔をされてウザいので、独りでコンサートへ行った。ふと東京に住んでいた頃は、よく独りでコンサートへ行ったなということを思い出した。まあ、今でも独りでコンサート取材へいったりすることはあるんだけど、取材でなく、純粋に独りでコンサートへ行くなんて本当に久しぶりだ。

会場には開演10分前に着いて、CDの売り場をチェックすると、肝心の新作CDが売り切れていた!DVDバージョンというのもあったけど、なんと450ペソもするという。「メキシコでは配給されていないので今回を逃したら買えないよ!」といわれるが、手持ちの金が250ペソなので、どう転んでも買えない(ヒモジイのです)。その売店では、見たことのないペドロのCDが何点か並んでいて、ふと、私が2007年に日本を離れてから、ペドロのアルバムをまったく買っていなかったことに気がついた。ファン失格であるのは当然なのだが、私のなかでは2007年に日本から出た時点で、いったん一つ目の人生が終わったのかもしれんな、と思った。メキシコに着いた時から、過去と切り離されたまったく新しい人生を歩んできたように思える。

ステージの幕が開くと、いきなりペドロ・アスナールの姿があった。コンサートでは、バンドのメンバーだけ最初に演奏して、中心アーティストは、しばらくしてから登場するスタイルが当たり前だと思っていたので、このいきなり幕が開いたらペドロがドーンと歌っているのが意表をついて良かった。余計なMCもいっさいなく、チャーリー・ガルシアと共作したアルバム『TANGO』の曲など、ずいぶん古い曲も演奏していく。背後にはチャーリーと共演したビデオが投影されていた。
新曲お披露目の割には、過去のアルバムの曲をみっちりやっている印象だ。アルバム『Cuerpo y Alma』の曲「A primera vista」「La pomeña」を歌っている頃にはもうジーンときてしまった。なんか日本に居た頃を懐かしく思ったな。電車のなかでこの曲をI-podで何度も繰り返して聴いてたんだよな、とか。





さらにセル・ヒラン時代の曲「Viernes 3AM(金曜午前3時)」含む大好きな曲をたくさん演奏したので、本当に嬉しかった。


しかも、あの心臓を突き抜けて耳を駆け巡るようなベースの音を生で聴けるとは感無量だ…..というか、ぶっちゃけ、鼻水をたらしながら泣き虫先生もびっくりなくらいに泣いていた(独りで)。

そんなところに追い討ちをかけるように、ペドロがアヨツィナパの43人の学生(ゲレロ州のイグアラ市でアヨツィナパの教員養成学校の学生たち6名が警察に殺害され、43名の行方が2ヶ月以上経ってもわかっていない事件で警察が殺害を認めたものの遺体が見つかっていない。いまメキシコじゅうが政府に対しての怒りに震えている。メキシコ各地で数日おきにデモが行われている状態)に向けた詩を朗読し始めたではないか!その後に観客たちほぼ全員が起立して1から43まで数え、最後に「¡Justicia(正義を)!」「¡Vivos se los llevaron!(行きたまま連れて行った)¡Vivos los queremos(生きたまま返せ)!」という合唱が響き渡る。気がつけば私も大声で一緒に叫んでいて、もう泣いてなんかいられないと思った。
観客の叫びが終わると同時に、ペドロはメルセデス・ソーサの代表曲である『Como la Cigarra』のカヴァーを歌った。そして、また私は泣かされた。

途中にゲスト参加した、メキシコのシンガーソングライター、Alejandro Filioとの共演もとても良かったな。

「私たちは今を大切にすることを忘れがちだ。未来でも過去でもなく今を生きているということを大切にしたい」と語り、「Ahora(今)」を演奏したのもすごく良かった。「この曲は、集中して聴いてほしいので、どうか黙っていてほしい」というペドロの言葉があったが、メキシコの客は黙っていることができないらしく、他の客にデカい声で「黙れ!」と言われて、その「黙れ」と叫んだ人に対しても周りが「シーッ!」と注意してたりして、なかなか静かにならないのが笑える。
みんな自分の好きな曲をやれ〜って叫び続けまくる感じとか、ずうずうしいけど憎めない。結局アンコールを3回もやらせるし。でもペドロも、きっと嬉しかったから観客の期待に応えたのだろう。

11月29日に行われたメキシコシティのコンサート映像(アヨツィナパのメッセージ)が既にアップされていた↓


ペドロが自身のFacebookに昨日朗読した詩を掲載していたので訳してみた。日本の人たちにも少しでも彼のメッセージが届けばと思う。

人間の樹のねじれた枝

貪欲さは根絶されない

演説で装っても

政令で取り繕っても

私たちは鞄の中にエゴイズムを抱えている

でもそれを鍛えて、人となっていく

私たちの中にあるドラゴン級の欠陥に打ち克つようなもので

何でも買ったり売ったりする 今日

民衆の信頼を裏切る

汚職はただ侮辱だけでない

至上権を有する人々は命令するが

発音するのは ただあさましい 死の言葉

その言葉に向かって

私たちは要求する

光の声とともに

43回の真実

43回の正義

43回のもうたくさんだ!

本日12月1日はメキシコシティのソカロ大広場から独立記念塔へ向けた大きなデモが行われた。アヨツィナパの学生43人の遺体が未だに見つかっていない件への抗議と、民衆のデモへの粛清と言える政府の卑劣な行為に抗議すること。ちょうど2年前、エンリケ・ペニャ・ニエトが大統領に就任した日でもある。
そのデモに少し参加した後に、マイケル・ナイマンのオマージュ・コンサート(映画『ピアノレッスン』の音楽『PIANO』や、新旧のメキシコ映画名作の映像をコラージュしたものを投影し、それにオーケストラが伴奏する総指揮マイケル・ナイマンの曲『Distinto Amanecer(それぞれの夜明け)』)を観にベジャス・アルテス(国立芸術院)へ行ったのだが、そこでも驚くべきことが起こった。 


2つの演目が終わった後に、演奏する予定のなかったマイケル・ナイマンがピアノの前に座ったのだ。そこで、彼が監督したビデオ作品『Witness 3』を上映し、その映像に伴奏をつけるということをしたのだが、映像にはアヨツィナパの43人の学生たちの写真と、人々が路上でデモする姿が捉えられていた。演奏が終わったあとに、劇場の観客たちがペドロ・アスナールのコンサートの時と同様に、1から43までを数え、正義を叫んだ(もちろん私も叫んだ)。

その日配られたコンサート・パンフレットに掲載されたナイマンの挨拶文の締めくくりにはこう記されていた。
「イグアラの43人の学生達の虐殺事件を受け、どうか早くメキシコの政治家たちが変わることを願う」。



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[ 2014/12/01 23:13 ] 音楽 | トラックバック(-) | CM(0)
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